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「あるご家族の相続物語」その②~親のお金が使えなくなる?~

ウェルビーイング・コンサルティング・オフィス

円満相続の道先案内人 寺田尚平です。

※登場人物についてはこちらからご確認ください。

「あるご家族の相続物語」始まります!

3月の年度末を迎えて、信彦さんの仕事は多忙を極めていた。

早いもので、父親が転倒してから8ケ月、認知症の症状が出てきてから6ケ月が経過しようとしていた。

母親が何とか父親の面倒を看てくれているおかげで、自分達家族の生活に支障をきたしている状態ではない。

そんななか、終業式を翌日に控えた3月後半のある日の夜中、母親から携帯電話に連絡が入った。

「父親がいない、どこかに出て行って帰って来ない」

信彦さんは、「とうとう始まったか 徘徊が・・・」と一言つぶやき、妻と長男と一緒に実家に急いだ。

母親に状況を聞いたうえで、妻、長男の3人で、父親が立ち寄りそうなところを中心に、2時間ほど歩きまくって捜したが見つけることはできなかった。

とりあえず、実家に戻ると、警察から電話があり、実家から歩いて15分ほどの交番で保護しているとのことだった。

父親を実家に連れて帰ることができたのは、もう明け方になっていた。

その後、徘徊は続いたため、さすがに母親も疲れた表情をみせることが多くなってきた。

さすがに、これではまずいと感じ始めた信彦さんは、介護施設に入所させるべく、情報収集を始めた。

高級老人ホームと一般的な施設とのサービスや費用の違いなどを調べたうえで、母親や弟、妹の意見を聞いてみることにした。

母親と弟は、信彦さんの判断に任すとのことであったが、神戸に住む妹は、「お父さんには、いい施設で、快適に過ごして欲しいわ。確かお父さんは、もしもの時、子ども達に負担をかけないようにと、しっかり貯金していたと思うよ」と高級老人ホームへの入所させたい意向だ。

信彦さんは、母親に父親の預金通帳を出してもらい、親に一体いくら預金があるのか、はじめて知ることになる。

「思っていたより少ない・・・」という印象が、率直な感想でした。

果たして、これでこれからの介護費用や将来かかるかもしれない相続税を支払うことができるのだろうか?

やっとこの春に、長女が独立して、学費の負担がなくなったばかりなのに、今度は介護費用かと思うと憂鬱な気分になってきた。

それでも、とりあえず、高級老人ホームの入所費用は、父親の預金から支払えそうだから、平日に休みをとって銀行に定期預金の解約に行くことにした。

銀行に行って、父親名義の定期預金の解約の旨を伝えると、奥から役職者らしい男性が出てきて、「本人の意向の確認が必要だから、父親を連れて来てほしい、それが無理なら電話で話させてほしい」と言ってきた。

父親は認知症だから、そのような受け答えは、もう無理な状態であることを伝えると、家庭裁判所で成年後見人を立ててくれないと引き出しはできないとの答えだった。

子どもが、親のために、親のお金を使うのに、なぜ裁判所にお伺いをたてないといけないんだ・・・信彦さんは何ともいえない寂しさを感じながら、とりあえず家庭裁判所に車を走らせた。

続きは次回のブログで。

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