シニアの選択肢が拡がる!~年金関連の制度改正の動向~
老後のお金と相続の最初の相談窓口 ウェルビーイング・コンサルティング・オフィスの寺田尚平です。
公的年金などの制度改正案が、今月から始まる国会に提出されます。
制度改正の目的は、年金保険料を納める「現役世代」を増やし、年金財政を圧迫している根本的な原因である「現役世代」と「退職世代」の比率を変えていくことです。
国からのメッセージは
「働ける人は、できるだけ長く働いて、社会保険料や税金を納めてください!」
「老後のお金は、国に頼るのではなく、長く働くなり、資産形成するなどして自分で努力してください!」
「企業は、社員が長く働ける環境を用意してください!そのために、業務や人事制度などの見直しをしてください!」ということでしょうか?
50代、60代前半の退職前後世代の方々は、暮らし方、働き方に応じて、年金を受け取り方の選択肢を増えることになります。
今まで以上に、自分の生き方や働き方などを踏まえた「ライフプラン」をしっかり立てていくことが必要です。
一方、企業にとっては、定年延長や人件費の増加など、抜本的に人事制度を見直すことが求められます。
今回、制度改正案の概要をお伝えしますので、今後のライフプランや事業計画などを考えるきっかけにしていただければ嬉しいです。
(制度改正の内容は、現時点で確定したものではなく、今後の国会審議等で変更になることもあります)
目次
- ○ 受給開始年齢の選択肢が拡がります
- ○ 在職老齢年金の制度の見直し
- ○ 在職時定時改定制度の導入
- ○ 高年齢雇用継続給付の段階的廃止
- ○ 厚生年金の適用範囲の拡大
- ○ 企業に「70歳定年」を努力義務化
- ○ 確定拠出年金制度の改正
- ○ セミナーのお知らせ
受給開始年齢の選択肢が拡がります
公的年金は、原則65歳から受け取ることになっていますが、60歳から70歳の範囲内で、受給開始時期を選択することができます。
60歳から65歳になるまでに受け取りを開始するのが「繰り上げ受給」、66歳から70歳までの間の受け取りを開始するのが「繰り下げ受給」になります。
今回の改正案では、現行70歳までの繰り上げ受給の上限年齢が、75歳まで選べるようになります。
また、現行「繰り上げ」行った時は、1ヶ月あたり0.5%年金額が減額されるルールになっていますが、改正案では1ヶ月あたり0.4%の減額されるルールになります。
例えば、60歳から受け取った場合は、0.5%×60ケ月=30%減額されていたものが、今回の改正で、0.4%×60ヶ月=24%減額されることになります。
「繰り上げ」の場合は、現行と変わらず、1ヶ月あたり0.7%年金額が増額されます。
70歳まで、年金の受け取りえを繰り下げた場合は、42%増額されることになり、75歳まで繰り下げた場合は、84%増額されることなります。
在職老齢年金の制度の見直し
60歳以降、会社員・公務員や会社役員として勤務し、厚生年金に加入しながら受け取る年金を「在職老齢年金」といいます。
年金額と給与と賞与の合計額に応じて、年金額が減額され、場合によっては年金が全く支給されないこともあります。
現行は、65歳未満の場合は、月収(給与と1年間の賞与の1/12)+年金額(報酬比例部分)の合計が、基準額28万円を超えると減額の対象となります。
今回の改正案では、この基準額が47万円に引き上げられます。
65歳以上の場合は、基準額の改定は見送られ、現行と同じ47万円のままで据え置かれる見込みです。
在職時定時改定制度の導入
厚生年金は原則、納めた保険料をもとに年金額が計算され、65歳から受け取るルールになっています。
65歳以降、在職老齢年金を受け取りながら、厚生年金に加入して働いた場合、毎月納める保険料分が年金額に上乗せされることになります。
現行、65歳以降納付した保険料を勘案して、年金額を再計算するのは、70歳時点(あるいは退職時)になっていて、5年分の保険料に相当する額が、70歳以降に受け取る年金額に上乗せされます。
今回の改正案では、毎年1回計算して年金額に反映される仕組みになります。
65歳から1年間に納めた保険料が66歳からの年金額に上乗せされることという風に、年金をもらいながら毎年、年金額増えていくことになります。
高年齢雇用継続給付の段階的廃止
「高年齢雇用継続給付」は、定年後の継続雇用などで、60歳時と比べて、賃金が大幅に下がった60歳~64歳の会社員を対象に給付金が支払われる制度です。
2025年度より、この制度を段階的に廃止する雇用保険法の改正案が提出される見通しです。
60歳時点と比べて賃金が75%未満となった60歳~64歳の会社員などに対し、賃金額の最大15%を支給するしくみですが、2025年度に60歳になる人から、段階的に給付額を減らし、2030年を目途に廃止する改定です。
厚生年金の適用範囲の拡大
パートタイマ―などの短時間労働者への厚生年金の適用拡大が、改正案にあがっています。
現在は、①従業員501人以上②所定労働時間が週20時間以上③月額賃金が8.8万円以上などの条件を満たすと厚生年金に加入することになります。
改正案では、従業員数の基準を段階的に引き下げて、2022年10月からは101人以上、2024年10月からは51人以上となっています。
中小企業に勤めるパートタイマーなどの短時間労働者が、厚生年金に加入することになります。
また、正社員などフルタイムで働く人は、厚生年金に加入する必要がありますが、従業員5名未満の個人事業所で働く人や農業や飲食業など「非適用業種」に該当する事業所で働く人は、加入対象から外されています。
今回の改正では、「非適用業種」のなかの弁護士、税理士などの「士業」の個人事業者が、厚生年金が適用される業種になります。
企業に「70歳定年」を努力義務化
現在、企業は60歳に達した社員に対して、65歳までは「定年の廃止」「定年延長」「継続雇用制度」のいずれかで、希望者全員に雇用の機会を確保する措置を行う義務があります。
今回の改正では、企業に対して、これらの措置を70歳まで延長し、さらに「他企業への再就職」「フリーランス・起業支援」などの選択肢を用意するという努力義務が課せられます。
確定拠出年金制度の改正
個人の自助努力で、老後資金作りを行うための制度である「確定拠出年金制度」の改正される見通しです。
現行、制度に加入可能な年齢は「個人型確定拠出年金(iDeCo)」は60歳未満。
「企業型確定拠出年金」においても、60歳未満(60歳未満からの継続雇用者は65歳まで)となっています。
改正案では、「個人型」は、65歳未満の国民年金任意加入被保険者、厚生年金被保険者まで、「企業型」は、70歳未満の厚生年金被保険者まで拡大されます。
また、原則60歳から70歳の間に、年金原資の受け取りを始める必要がありましたが、75歳まで受給開始を遅らせることができるようになります。
セミナーのお知らせ
「経費」で貯めながら、「節税」もできる国の制度である「個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)」「企業型確定拠出年金(企業型DC)」や投資を活用した資産形成の考え方などについて、わかりやすくお伝えするセミナーです。
【こんな方におススメです!】
・フリーランス・個人事業主・中小企業経営者の方でご自身の退職金づくりを考えている方
・「iDeCo(イデコ)」や「NISA(ニーサ)」などの制度について、詳しく聞いてみたい方
・社員の定着化を図るために、福利厚生制度として企業年金制度を検討されている方
・株式などへの投資を活用して「退職金づくり」をするためには、どのように考えたらいいかわからない方
<タイトル>『自分と社員のための「退職金づくりセミナー」』
<開催日時> Ⓐ2020年1月18日(土) Ⓑ2月8日(土)
15:15~16:45(ⒶⒷともに)
<会 場> 和歌山県民文化会館 Ⓐ407会議室 Ⓑ502会議室
<講 師> 老後のお金と相続の最初の相談窓口
ウェルビーイング・コンサルティング・オフィス 代表 寺田尚平
<参加費用> 1,000円(税込)
<お申込み方法> お電話または、「セミナーお申込み」ページよりお申込みください。
📞073-494-7778 【受付時間】9:00~19:00(土日祝もOK)