Blog ブログ・お役立ち情報

Blog

HOME//ブログ・お役立ち情報//事業承継対策 ~自社株の引き継ぎに活用できる「家族信託」~

ブログ

事業承継対策 ~自社株の引き継ぎに活用できる「家族信託」~

オーナー経営者にとっては、事業承継における自社株の引き継ぎは、頭を悩ますことの多い問題です。

子どもが後継者として、会社に入っていても、自社株をどのタイミングで引き継ぎを行うかは、難しい問題です。

自社株の後継者への引き継ぎは、生前贈与、売買、相続の3通リの方法が考えられますが、贈与税、所得税、相続税という税金の問題だけでなく、経営権をどのタイミングで、後継者に渡すのか というナーバスな問題も絡んできます。

自社株の引き継ぎに関して、「家族信託」を活用することで、様々なニーズに対応できることがありますので、それらの事例について、お伝えします。

 

目次

そもそも株主の権利とは?

株主は3つの権利を持っています。
①配当請求権(財産権)
②残余財産の分配請求権(財産権)
③議決権(経営権)

自社株を100%所有しているオーナー経営者は、会社に対するこの3つの権利を独占している状態です。

自社株を後継者に、贈与や売買で渡すことは、この3つの権利をまとめて、渡すことになります。

ここに、様々な問題が起こる原因があります。

わしの目の黒いうちは・・・

会社の日常の運営については、後継者が取り仕切っていて、日々成長していることは、実感していても、重大な経営判断などについては、まだ任せることはできないと考えているオーナー経営者は多いように思います

親から見れば、子どもはいつまでも子どもであり、頼りなく思うものです。

また、長年苦労して経営してきた会社から、そう簡単に離れることはできないという気持ちも理解できます。

だから、自社株の配当請求権や残余財産請求権という財産権は、後継者に渡しても、会社にとって重大な事項を株主総会で決める権利である議決権、すなわち経営権は手放したくはないというオーナー経営者がおられます。

会社の業績が一時的に悪化したなどの要因で、自社株の評価額が低下していて、後継者に生前贈与しても、贈与税の負担が大きくない場合でも、経営権を手放したくないことから、贈与しないという事態が起こります。

相続発生時に、会社の業績が回復していて、株価が高くなっていたら、相続税の負担が予想以上に大きくなることも考えられます。

しかし、経営権を手放したくないオーナー経営者は、後継者が力を発揮し始めているのもかかわらず、引き続き自社株を保有したままになってしまいます。

オーナー経営者が、自社株を持ち続けた場合に起こること

万が一、高齢になったオーナー経営者が、認知症や脳卒中などで判断能力が低下した場合、議決権の大半を持つオーナー経営者の意思が確認できませんので、株主総会を開催することができません。

決算の承認や役員の改選、重大な意思決定などを行うことができません。

もし、親であるオーナー経営者が、代表取締役であれば、代表者印を押すことができなくなりますので、様々な契約や銀行からの借入などを行うことができません。

様々なところで、会社の運営に支障をきたす事態になってしまいます。

実務上は、奥様や後継者が、代わりに押すこともあるかと思いますが、法律的には「私文書偽造」という犯罪になります。

高齢のオーナー経営者が、自社株を持ち続けていたことが原因です。

自社株を後継者に渡した方がいいのはわかっているけれど、でも渡したくないというオーナー経営者の想いを叶えることが「家族信託」を活用することで実現できます。

自社株の引き継ぎに「家族信託」を活用する

財産を所有することは、2つの権利を持っています。

それは、「財産から収益を得る権利」と「財産を管理・処分する権利」です。

「家族信託」は、この権利を分けて持つことにより、様々なニーズに対応することができます。

「家族信託」を活用すれば、自社株においても、配当請求権や残余財産請求権という「財産権」と議決権という「経営権」を分けて持つことが可能になります。

基本的な「家族信託」のしくみについては、こちらからご確認ください。

事例~その① 認知症などに備えて~

自社株を保有するオーナー経営者と後継者の間で、自社株を信託財産とする家族信託契約を結びます。

オーナー経営者は、財産の管理を託す「委託者」であり、財産からの収益を得る権利をもつ「受益者」になります。

後継者は、財産の管理・処分を託された「受託者」となります。

「受託者」は、自社株の議決権を行使することができますので、このままだと経営権は、持っておきたいというオーナー経営者の希望を叶えることができません。

そこで、議決権の行使方法を指図できる「指図権」をオーナー経営者が持たせるように設定します。

受益者であるオーナー経営者に相続が発生した場合は、家族信託契約を終了して、後継者が自社株を引き継ぐようにします。

このようにすれば、オーナー経営者は、元気なうちは、「指図権」を行使して実質的に「経営権」を握るととものに、配当を受け取ることもできます。

実態として、オーナー経営者が自社株を保有しているのと変わりません。

そして、オーナー経営者が、認知症や脳卒中などで判断能力が低下した場合は、後継者が「受託者」として、議決権を行使することになり、会社の運営に支障をきたすことがないようにしておくことができます。

自社株の評価が高くて、生前贈与を行えば、贈与税がかることを避けたい場合で、オーナー経営者の判断能力が低下した場合に備えて、相続発生後はスムーズに後継者に自社株を引き継ぎたいというニーズに対応できるしくみです。

だたし、自社株の「財産権」の移転は、相続発生時になりますので、相続税の対象となり、自社株の評価額を低下した時期に移転するなど税制面で、必ずしも有利なタイミングでの移転を実現することができないかもしれません。

事例~その② 生前贈与を行う~

一時的に業績が悪化したため、自社株の評価額が低下しているなどの事情により後継者に自社株を贈与しても問題ないというケースです。

オーナー経営者は、自社株を信託財産として、財産の管理を託す「委託者」かつ財産の管理を託される「受託者」となります。

「委託者」と「受託者」が同一人物になる信託は、「自己信託」といい、自分の財産の管理を自分に託すという何とも奇妙な形になります。

財産からの利益を得る「受益者」は後継者とし、税務上は「みなし贈与」となり、贈与税の対象となります。

配当を受け取る権利などの「財産権」は後継者が持ち、議決権を行使する「経営権」はオーナー経営者が持つことになります。

自社株の評価が低下している時期に、財産権の移転を行うことで、贈与税や相続税の税負担を軽減できる効果が期待できます。

ただし、オーナー経営者が認知症などで判断能力が低下した場合に備えることはできないというデメリットがあります。

事例~その③ 遺留分対策を考える~

事例②では、後継者に自社株を生前贈与することになりますが、オーナー経営者に後継者の兄弟姉妹など、後継者以外の相続人が存在している場合、「遺留分」の問題が発生することが考えられます。

オーナー経営者の財産のなかで、自社株の割合が高く、後継者以外の相続人が相続する財産がない場合などは、他の相続人から後継者に対して「遺留分侵害額請求」をされる可能性があります。

相続開始前10年間にされた贈与については、遺留分の算定に範囲に含めることができますので、自社株の贈与がその期間に該当する場合は、自社株を入れて遺留分を計算することになります。

このような問題を防ぐために、資金的な準備ができるという前提であれば、後継者が、オーナー経営者から自社株を買い取ったうえで、家族信託を活用する方法が考えれます。

後継者は、対価を払って自社株を取得しますので、他の相続人から「遺留分」を請求されることはありません。

そして、自社株を信託財産として、後継者は「委託者」兼「受益者」として、配当等を受け取り、オーナー経営者は「受託者」として、議決権を行使することができます。

まとめ

事業承継における自社株の引き継ぎにおいて「家族信託」は今まで対応できなかったニーズにも応えることができますので、有力な選択肢であると考えられます。

自社株の引き継ぎに関しては、贈与税、相続税などの税金、後継者以外の相続人との財産の分け方のバランス、議決権が行使できる経営権、認知症などによって判断能力が低下した時 というように様々な観点から最適な方法を検討する必要があります。

さらに、事業承継は、自社株などの財産の引き継ぎだけでなく、経営理念や社員や取引先との信頼関係、ノウハウなど 様々な目に見ない財産も引き継ぐ必要があります。

オーナー経営者の方々は、可能な限り、早い時期から事業承継について、様々な角度から検討を行うことをおすすめします。

当オフィスは、相続のことが何となく気になっているけれど

・どこに相談したらいいんだろうか?

・いったい何から手をつけたらいいのだろうか?

・よくわからないけれど、このままでは何か将来困ることになるのではないだろうか?

・色々なところから相続対策の話はあるけれど、果たしてその方法が、自分達の家族にとって最適な方法なのだろうか?

・今、相続の対策をすすめているけれど、異なる意見(セカンドオピニオン)も聞いてみたい。

という方にピッタリなところです。

どうぞお気軽にお問い合わせください

ご相談のながれ、お問合わせはこちら👇から

SHARE
シェアする

ブログ一覧