「あるご家族の相続物語」～その⑨４社の見積書～
ウェルビーイング・コンサルティング・オフィス
円満相続の道先案内人 寺田尚平です。
※登場人物についてはこちらからご確認ください。
「あるご家族の相続物語」始まります！信彦さんの頭を悩ます問題は、成年後見制度だった。
以前は、他人に父親の財産の管理を任すことになる成年後見制度については、何となく納得できず、できれば利用しないでおこうと考えていた。
しかし、母親が他界したことにより、その相続手続をすすめるためには、成年後見制度を利用せざるを得なくなった。
成年後見制度は、一度開始すると、父親の意思判断能力が回復するか、死亡するまで、やめることはできない。
しかも、成年後見人になった専門家に、毎月報酬を支払い続けなければならない。
今回の母親の相続手続が終わっても、父親の財産の管理は、成年後見人である司法書士が担うことになる。
そんななかで、昨年と同じように大雨により、実家の一室に雨漏りが発生した。
昨年のアパートの雨漏りの修理費用は、成年後見制度を利用していなかったため、意思判断能力のなくなった父親の預金から引き出すことができず、仕方なく、信彦さんの預金から引き出した。
信彦さんは、今年は成年後見制度の活用により、手間なく父親の預金から引き出すことができるだろうと考えていた。
ところが、司法書士に依頼すると、まず修理業者４社の見積書をとるように指示された。
信彦さんは、思わず絶句し、心のなかでつぶやく。
「確かに、成年後見制度は、父親の財産を守ることが一番の目的だから、できるだけ修理費用が安いところに依頼する必要があるのはわかるが、そこまでする必要があるのだろうか？？？」
信彦さんは、平日の勤務時間の合間に、スマホで業者を調べ、連絡をとった。
そして、現場を確認してもらうために、業者には土曜日に来てもらい、それに立ち合う ということを４回繰り返した。
結果的に、時間はかかったけれど、何とか雨漏りの修理は完了して、その代金は父親の預金から引き出して支払うことができた。
「これからも老朽化しているアパートや実家には、同じようなことが起こることになるだろう。何度もこんな手間のかかることをやらなくてはならないのか」と思うと、本当に憂鬱になってくる。
父親は、施設に入れることができたので、その点では手間はかからなくなったが、アパートや実家の管理に手間がかかってしまう。
もう誰も住むことはないと思われる実家、わずかな家賃収入が入るだけのアパートのために、こんな手間をかけるのは、本当に割にあわない。
最近、雑誌などの記事でよく見かける「負動産」そのものだ。
信彦さんは、何とかしなければと考え、とりあえず、父親が元気だった５年ほど前に、一緒に話を聞いたことがあるハウスメーカーの担当者の名刺を探しだして、連絡をとってみることにした。
続きは次回のブログで・・・
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