子どもがいないご夫婦と遺言書
皆さま こんにちは!
老後の安心と家族の幸せづくりの専門家 ファイナンシャル・プランナーの寺田尚平です。
寒波と緊急事態宣言により、3連休の最終日は「巣ごもり」という方も多いのではないでしょうか?
こんな時こそ、将来のことや今年の目標、やりたいことなどを考えてみる有意義な時間にしたいものですよね。
昨年の夏以降、将来のことを考えて、住み替え、金融商品や保険の見直し、遺言書の作成、今後の生活設計などのご相談をされる方が多くなっています。
コロナの影響かどうかはわかりませんが、今まで気になっていたけれど、先送りにしてきた課題に向き合う方が増えているように思います。
先日、子どもがいないご夫婦から、もしコロナで万が一のことがあったら心配とのことから、遺言書の作成についてのご相談をお受けしました。
今回は、子どもがいないご夫婦と遺言書についてお伝えしたいと思います。
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目次
- ○ 子どもがいないご夫婦の相続人は誰だ?
- ○ 子どもがいないご夫婦は「遺言書」の作成は必須!
- ○ 手軽に自分達だけで作成できる「自筆証書遺言」
- ○ 信頼性が高く、スムーズな相続手続が期待できる「公正証書遺言」
- ○ 次の次まで考えた対策を!
- ○ まとめ
子どもがいないご夫婦の相続人は誰だ?
人が死亡した時、すなわち相続が発生した時は、亡くなった人の預貯金、不動産などの財産を引き継ぐ人の名前に、名義変更するにはどうしたらいいのでしょうか?
遺言書等を作成していない場合は、相続する権利のある人(=相続人)全員が話し合い(遺産分割協議)を行い、全員が了承うえでの決めたという証(あかし)として、遺産分割協議書などに、全員の署名と実印による押印が必要になります。
子どもがいないご夫婦の場合、相続人はどうなるのでしょうか?
例えば、夫が亡くなった時に、夫の親が健在であれば、妻と親が相続人となります。(両親が健在でれば、妻とご両親が相続人)<ケース1>
既に、夫のご両親が亡くなっている場合は、夫の兄弟姉妹がいれば、妻と兄弟姉妹が相続人になります。 <ケース2>
もし、夫の兄弟姉妹のなかで、夫より先に亡くなっている人がいる場合は、その人の子ども(甥・姪)と妻が相続人となることもあります。<ケース3>
特に<ケース2><ケース3>の場合、遺された人(この場合では妻)が、大変な苦労を背負い込むことが考えられます。
この場合、妻が夫名義の預貯金や自宅等の名義を自分の名義に変更しようとした場合、夫の兄弟姉妹や甥・姪に事情を説明をして、書類に署名と実印の押印、印鑑証明等の添付を依頼することになります。
夫の兄弟姉妹が3人以上いるとか、既に兄弟姉妹のなかで亡くなっている人がいる場合は、その甥・姪も相続人ということになれば、多くの人が相続人となったり、当然遠方に住んでいる方がいたり、中には今まであまり面識のない人がいたり・・・ということが起こります。
日頃から、夫の兄弟姉妹や甥・姪と交流があれば、時間はかかるかもしれませんが、問題なく名義変更できるかもしれませんが、あまり交流がない場合はどうでしょうか?
かなり大変なことになる可能性があることは想像できますよね。
(関連ブログ)子どもがいないご夫婦に「まさか」の出来事が・・・
子どもがいないご夫婦は「遺言書」の作成は必須!
このように、子どもがいないご夫婦は、兄弟姉妹や甥・姪が相続に関与してくることもあり、場合によっては、遺された方が大変な苦労を背負い込むことになることも考えられることはご理解いただけたでしょうか?
子どもがいないご夫婦は、自分が亡くなった後、自分の預貯金や不動産等は、相方のこれからの生活のために使って欲しいと思うことが多いと思います。
自分の死後、この想いをスムーズに実現するには、遺言書の作成などの生前対策は必須です。
具体的には「夫婦相互遺言」や「夫婦たすき掛け遺言」と言われる、自分が亡くなった後は、相方に相続させる旨の遺言を書き合うことです。
生前に夫婦お互いに遺言書を作成しておれば、相続発生した後、その遺言書に基づいて、預貯金等や不動産の名義変更は可能になります。
基本的には、兄弟姉妹や甥・姪などの署名や実印の押印、印鑑証明書の添付は不要になり、遺された方がひとりで名義変更の手続を進めることができます。
また、相続人が子どもなどの場合と違って、相続人が兄弟姉妹や甥・姪の場合は、相続人の最低限の取り分として定められている「遺留分」がありません。
子どもがいないご夫婦で、夫が全財産を妻に相続させる遺言書を作成していても、遺された妻は、夫の兄弟姉妹から、最低限の取り分である「遺留分」を法的に主張されることはありません。
手軽に自分達だけで作成できる「自筆証書遺言」
遺言書と言えば、巻物に毛筆で書いたものをイメージする方のおられると思いますが、そのような遺言書もないことはありませんが、ちょっとイメージが違います。
主な種類の遺言書としては「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
「自筆証書遺言」は、本人が自書、押印して作成します。
和紙でも、便箋でも、スーパーのチラシの裏に書いてもOKです。
ただし、本人が手書きで自書すること、日付があること、押印していることなどの要件があり、要件を満たしていない場合は無効になります。
要件さえ満たすことができれば、自筆証書遺言は、費用もかからず手軽に作成できるのですが、遺言書の紛失や偽造などのおそれがあります。
また、本人が亡くなった後に、家庭裁判所において、原則、相続人全員が集まって「検認」の手続を行う必要があります。
自筆証書遺言は、この「検認」の手続が行われていないと、預貯金等の名義変更などの手続に、遺言書を使うことができません。
「検認」の手続を行うために、家庭裁判所から、相続人全員に通知が行くことになりますので、子どもがいないご夫婦の場合で、兄弟姉妹などの遺された相方以外の相続人に遺言書の存在が明らかになることになります。
「自筆証書遺言」は、この「検認」の手続があるため、生前に、兄弟姉妹などに遺言書を作成していることや兄弟姉妹などが相続する分はないことを説明していれば、問題はないかもしれませんが、兄弟姉妹などに余計な負担をかけることになるかもしれません。
令和2年7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度」は、手軽に作成できる「自筆証書遺言書」を法務局で保管してくれる制度です。 ※自筆証書遺言書保管制度については、下のリンクよりご確認ください。
自宅などで保管することに比べて、紛失や偽造の心配がなくなり「検認」の手続が不要となります。
基本的には、財産を引き継ぐ遺された方が、法務局から「遺言書情報証明書」を交付してもらったうえで、預貯金や不動産などの名義変更を行うことができます。
しかしながら、この場合でも、法務局から兄弟姉妹などの他の相続人に、遺言書が保管されていることが通知されることになります。
信頼性が高く、スムーズな相続手続が期待できる「公正証書遺言」
「公正証書遺言」は、本人の意向に基づいて、公証人が作成した遺言書の内容について、2人の証人の同席のもとで、本人が確認・承諾したうえで、公証役場に遺言書が保管されます。
少し手間と費用はかかりますが、公証人が関与して作成しますので、信頼性が高く、紛失や偽造の心配のない遺言書が作成できます。
基本的には、相続発生後、兄弟姉妹などが関与せず、財産を引き継ぐ遺された方がひとりで、預貯金や不動産など名義変更を行うことができます。
法務局に保管した自筆証書遺言のように、兄弟姉妹などの他の相続人に通知されることもありません。
次の次まで考えた対策を!
子どもがいないご夫婦の場合、もうひとつ考えておかないといけない事があります。
それは、両方が亡くなった後、最終的な預貯金や不動産などの行き場です。
片方が亡くなった時は、遺された方が引き継ぐことが多いと思いますが、遺された方が亡くなった後、誰が引き継ぐかです。
片方が亡くなった後、遺された方があらためて遺言書を作成して、誰に引き継ぐかを指定する方法もありますが、その時点で万が一認知症などにより判断能力が低下していた場合は、遺言書を作成することはできないこともあります。
預貯金等や不動産の最終的な行き先についても、「予備的遺言」を活用して指定しておくことも検討する必要があります。
また、認知症等による判断能力の低下した時の預貯金等の管理などの問題への対応と次の次以降の財産の行き先まで指定することができる「家族信託」を活用することもひとつの方法です。
まとめ
子どもがいないご夫婦の場合、生前に遺言書の作成などの対策をしないまま、突然相続が発生すると、遺された方が思わぬ苦労を背負い込むことになります。
万が一のことは、いつ起こるのかは、わかりませんので、将来に悔いを残さないためにも、早め早めに対策を検討することが大切です。
まだ早いからとか、そのうちに・・・などと先延ばしにせず、すぐに行動に移すことをおススメします。
また「遺言書」を作成するというと「縁起でもない」とか言う人もいますが、私の経験上、遺言書を作成して後悔した人はおりません。
多くの人が「遺言書」を作成した後、心配していたことが解消されて「とてもスッキリした」という感想を言われます。
私も昨年7月に「遺言書」を作成しましたが、とても爽快な気持ちになれましたし、「縁起でもない」ことは一切起こっていません。
むしろ「縁起のいい」ことばかりが起こっています。
思い立ったが吉日です!
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